大工だからできる家

木の家づくりには、木の知識や経験が必要です。
常に木に触れ、木を知り抜く大工棟梁と、
木の性質を活かしきる
家づくりをしませんか?
綾部工務店の大工棟梁、綾部孝司が書いてます。
2013年8月8日

出し桁の家のこと

建て方を行っている出し桁の家の出し梁を納めると、軒の感じがだんだんとわかる様になってきました。軒の出は1550ミリ。埼玉北部から群馬にかけて現在でも点在している昔の家の美しさは、気候に配慮した軒の出を抜きには語れない気がしてきました。軒下の縁や広縁で庭を眺めながら近所の人たちとの交流ができたり、雨の日でも窓を開けておける性能を持っていたりというのが日本の家なんだなと感じています。
施工途中の写真などはこちらをご覧下さい。

構造見学会を9/1及び8に行います。詳しくは次のリンク先をご覧下さい。
https://ayabekoumuten.jp/contents/news/files/toki-s-kengaku2.pdf


2006年7月2日

軒の出

梅雨の長雨と秋の長雨そして夏の夕立と、日本はやっぱり雨が多いですね。さらに台風や地球温暖化の影響でスコールのような集中的な雨も数多くあります。つまり、雨対策や湿気対策を抜きに日本の家は語れないことになります。雨に対しての性能を上げるには軒の出を深くすることが挙げられます。雨の日でも窓が開けたい場合などは窓の庇(霧除け)があると良いです。
最近、一般的につくられている住宅は、コストダウンや敷地広さの関係により軒の出が少なくなるのは当たり前、シンプルなデザインを意識し出が無い住宅もよく見かけます。地域性により軒の出を浅くすることが必要になることもあるとは思いますが、雨を眺めて文学に勤しんだり、紫陽花を見ながら雨宿りをするという風情のある生活を捨ててしまってはもったいないような気がしています。何よりも心が育たないですね。
普段の仕事では、軒の出を1メートル前後確保していますが、敷地が狭い場合はプランを工夫したり、高さを抑えるなどなるべく軒先の機能が有効に働くように意識しています。コーキングや外壁材のみに頼るのは、長期的に見て心配でもありますので。
雨を凌ぎ、夏の日差しをカットし、冬の日差しを取り入れる軒先の文化が復活することを願います。


2006年6月25日

木の外壁

外壁に板を張ることが当たり前だった時代、新築や外壁を修繕した家は周囲の家からひときわ目立った存在になったことでしょう。住まい手は家を大切に使おうという気になり、造り手は見守り続ける気持ちを新たにしたに違いありません。また、周囲の住民はその木肌の美しさに見とれ木を見ながら生活することを心地よく感じていたことでしょう。そして、左官壁と木肌で統一された美しい街の景観がそこにはあったはずです。
最近板張りの外壁を多く施工しますが、通りすがりの方や見学会に来られた方は改めて木の美しさを発見され、しばらく眺めている方もいらっしゃいます。今では、外壁に板を張ること自体が珍しいことになってしまい、その美しさを忘れかけていることが非常に残念でなりません。木は長持ちしないどころか、使い方を間違えなければ数十年間メンテナンスフリーであることは、意外に知られていないことです。法的に木が張れない地域では、土壁と併用するなり、部位を限定することで張れる場合もあります。新建材や化学素材に囲まれた生活が良いのかどうかを街の美観や環境保護の立場からも住まい手、そして造り手が考える時期に来ているようです。
写真の家の住まい手は、30年後に美しく味わいの増す外観を求めていましたので、無塗装の板張りとしました。適度に木が風化した様を美しく感じるかどうかはその人の美観や価値観によるとは思いますが、幾多の風雨に耐えたその姿を造り手である私は美しいと感じます。