大工だからできる家

木の家づくりには、木の知識や経験が必要です。
常に木に触れ、木を知り抜く大工棟梁と、
木の性質を活かしきる
家づくりをしませんか?
綾部工務店の大工棟梁、綾部孝司が書いてます。
2023年12月10日

どこへ向かう日本の家と暮らし

2025年から建築物省エネ法により、小規模住宅であっても断熱性能が一定水準以上でないと建てられなくなります。
居住時に使用するエネルギーを節約し、CO2の発生を抑えることにより地球温暖化の対策となる訳で、これから私たちの進むべき道の基本になろうとしています。一方で伝統的な構法でつくる気候風土適応住宅は、高断熱化は不可能ではないですが、総合的な視点から馴染みはあまり良いとは言えません。建築物省エネ法上は、現時点でも例外としてその基準が除外や緩和されています。

何事においても長短表裏一体の関係があるように、この断熱強化においては次の問題を孕んでいると思われます。
・断熱と気密はセットで考えますが、それらを実現しようとすると、使う資源が増え、イニシャルコストやメンテナンス費用、廃棄時のコスト増は避けられない。
・災害時の自然界への流出や復旧時の使用資源が増え、環境への負荷が増えることがある。
・簡単に断熱性能を上げるために、窓を小さくすれば良いなどという考えが出てくるかもしれない。事実その傾向はあるらしい。
・室温は上がるが、思ったほどエネルギー使用量が減らない。
・内外温度差が大きいということは、気密層に欠陥が生じた場合に、耐久性への影響が心配される、、、、、など。

写真は気候風土適応住宅の縁側での団欒の様子です。断熱的には不利になるものの半屋外的に使えるところがあると何かと重宝です。
濡れ縁ですが、大きな引き込み窓により、十分なコミュニケーションが取り易くなっています。
人の顔を見て話す時間よりもディスプレイを見ていることが多い現代人にとって、実は物理的に開けた住まいが必要なのかもしれません。

断熱性能を取るか、開けた暮らしを取るか。さらにはどちらも取りたいという選択があるかもしれません。
義務化以降は、断熱基準に適合し更にそれを強化する方向に進むか、気候風土適応住宅を選ぶかの選択を迫られます。
本来の目的や程度を考え、暮らし方もイメージしながら総合的に判断したいところです。

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2021年9月4日

カーボンニュートラルに向けて

カーボンニュートラルやSDGSの実現に向けた動きが活発化しています。
解体した古材は、通常廃棄物になってしまいますが、長期間その家を支えてきた木材は、丁寧に解体すれば使える場合が多く、特に伝統構法の場合は木組みになっているため、手ごわしであれば綺麗に解体しやすいようになっています。

写真の材料は、数十年間床を支えてきた地松の梁で、表面こそ日焼けなどで変色しているものの、削ってみると綺麗な肌目が現れてきます。新材だけの木組みよりも落ち着きを感じるのはその家の歴史を感じるからでしょうか。材は新たな居場所を与えられ再び時を刻み始めます。

廃棄物は再利用、再資源化、燃料化、埋め立ての順で徐々に環境負荷が増えるため、できることならばCO2発生の少ない再利用を目指したいところです。現在は、再資源化のための様々な技術が開発され、出来るだけ流出しないように配慮されていますが、それでも多くのものが山へ川へ海へと溜まり続けています。

まずは材料の選定に目を向け、それがどのようなライフサイクルになるのかを考え、その材料に最適な施工方法を選ぶことが大切です。出来るだけ多くの方にそのことを伝えたいと思います。


2020年11月17日

「伝統建築工匠の技」ユネスコ無形文化遺産登録へ(報道情報)

予てより、伝統構法でつくる木造建築をユネスコの無形文化遺産に登録するための活動に参加させていただいておりましたが、この度、日本の木造建造物を受け継いでいくための「伝統建築工匠の技」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されることになりましたのでお知らせいたします。
今後、多くの方々が受け継がれた素晴らしい技術に触れる機会が増えることを願っております。
詳しくは次をご覧ください。
NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201117/k10012716171000.html
関連するTシャツは次から購入可能です。

新しいTシャツが入荷しました。


2019年1月13日

2/3(日)和の住まいリレーシンポジウムin飯能

国の進める和の住まい推進関係省庁連絡会議では、和の住まいを推進しています。
その関連シンポジウムが2/3(日)埼玉県飯能市で開催される予定です。
「山とまち、自然と人を結ぶ木の家に当たり前に住むには?」をテーマにし、山主からつくり手、住まい手までが一堂に会し、会場も交えた対話型の座談会を開催する予定です。
詳細や申込先は次のリンク先記事をご覧ください。

2/3(日)和の住まいリレーシンポジウムin飯能の記事


2018年5月5日

環境に配慮しつくるために

久々に秩父へ行く機会がありました。
国道299号線を走って行くと必ず目にするこの光景。山肌を削り取られた名山「武甲山」。
建築を生業にしている上で切り離せない石灰岩との関係。毎回この名山を見るたびになんとも言えぬ気分になります。
ここ数年、建築にできるだけセメントを使わない事を心がけているのですが、この光景を見ると改めてその思いが深まります。

もともと素材を長持ちさせる事で環境への負荷を最小限に抑えていた日本の建築。
循環資源である木材を適切に使い長持ちさせる事で鉱物資源などもできるだけ長く使用し、その後の再利用までイメージして建築することが大切であることを再認識しました。

建物を長持ちさせるには、次の点をクリアする必要があると思います。
・物理的な耐久性、・機能的な耐用性、・意匠的な普遍性、・維持管理の容易性、・技術と倫理観の継承など
また、建てるにあたっては、工学的な検証性も必要となります。

工業建材を使わずに木材などの生物素材や自然の鉱物素材をのみで建物をつくるには、苦労が付きまとう状況ではありますが、関係者の不断の努力により、法律の方も伝統的な構法の建物がつくりやすく変わって行くものと期待しています。
この国の木造建築が環境と共生するものに回帰して行くことを願いながら、できることを続けて参ります。


2017年10月3日

くむんだーのホームページ公開されました!

全国くむんだー®︎木のジャングルジム協会が今年の春から動き出し、協会のホームページがつい先日出来上がり公開されました。
https://kumundar-kyokai.net

くむんだー®︎という木組みのジャングルジムは、今から6年ほど前、滋賀県に生まれました。発案者は川村工務店の川村さん。木の家ネット・埼玉はこの「くむんだー」に託された想いを伝えるため、「くむんだー」を用いた活動を始め今年で3年目になります。昨年から今年にかけて全国各地で活動する仲間たちが徐々に増えつつあります。

木を身近に感じるツールとして、大工体験ができるツールとしてこれからも活動の場を増やしていくことになりそうです。開催情報も発信していく予定ですので、近くで開催の際は是非ご参加なさってください。子供が主役のイベントですが、親たちがはまっていることが実は多いのです。


2016年12月19日

庭をつくって暮らすこと

雑木の庭に暮らすことを望む方が増えているのは周辺から雑木林が段々と減っている事が関係しているのではないかと、ふと思いました。写真の住宅は郊外住宅地や市街地に建っていますが、窮屈そうな緑では無く、木にとってものびのびと成長できるくらいの庭の大きさです。
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計画当初から家と庭のバランスに配慮し、それぞれがつながりを持って快適な暮らしをサポートできる様に計画しています。いずれもエアコンなしで暮らされています。冬場はたっぷりとした日差しを受けられるように建物形状と配置に気遣いをしています。
庭を通じて周囲ともつながっていく広がりのある暮らし方は、周辺環境や近隣関係も良くしていく気がしています。

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2016年2月28日

ヨイトマケと石の基礎

天然の礎石のみで基礎をつくる事は一定の条件が揃えば、現行法下でも可能です。
IMG_3007コンクリートを使わない利点は、その耐用年数にしばられない事、そして建設時と除去時のエネルギーが少なく済み、産廃を減らせる事、災害時などには原状復旧が容易であるなどいつくも挙げられます。計画時の一定の条件とは、安定した地耐力を得られる地盤であること、そしてバランスの取れた木組み架構と荷重の分散が出来ていること、適切な工期が得られているかなどです。
DSC_0258(根切り地盤を転圧後、現地調達の割り栗石を設置し、砕石で高さを揃えた後再転圧します)
IMG_2936(荷重に応じたサイズの石を設置後、砕石に馴染ませ、ヨイトマケで締め固めます。)

コンクリートや鉄筋の分は安価になるため、石代と地業費用が増えてもかえって費用が抑えられる事も珍しくありません。ヨイトマケなどは、地業と石の据え付け共に行う事も出来ますが、写真の例では、割り栗と砕石設置後にランマーで突き固め、石の設置後にヨイトマケを行いました。ヨイトマケは職人ばかりで行うと予算確保が難しいため、昔ながらの結(ゆい)かイベントとして行う事がお勧めです。心棒(重り)の重さにもよりますが、4人〜10数名で行うことができ、人が増える分には問題ありません。地域の方々も飛び入り参加をしての共同作業は、何か得るものがありそうです。
ムービーはこちらです。


2014年9月30日

本小松石という礎石 

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真鶴半島の付け根のところに、本小松石の採石場があります。本小松石は今から約40~45万年前に箱根の何回かの噴火によって作られた輝石安山岩です。緻密で耐久性耐火性に富み、吸水性が小さいのが特徴です。

1200年程前の墓石に小松石が発見されていて、鎌倉時代には関東の石材の主要な産地であったそうです。江戸時代には、徳川家康が小松石で江戸城の石垣を築きました。そして川越周辺の古い建物の基礎はというと、やはり小松石を含む安山岩が多く使われている様です。

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さて、そんな小松石の産地を訪れたときに知りましたが、この石はある程度の大きさの塊として、採掘されます。切り出す訳では無いそうです。塊同士の境界面は、紫がかった茶色で野ずらと言い、侘び寂びを感じる趣のある肌面です。

添付した写真は、以前施工した石場建ての住宅に採用した石の加工風景です。野ずらの石も使いましたが、多くは四角く加工し、表面にビシャンをかけました。

とてつもなく長い時間をかけてできた石を用い、その上に建物を建てる事は、単に意匠性や耐久性を高めるためという事以上に、大地と一体になった暮らし方を見つめるきっかけになりそうです。

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2013年8月8日

出し桁の家のこと

建て方を行っている出し桁の家の出し梁を納めると、軒の感じがだんだんとわかる様になってきました。軒の出は1550ミリ。埼玉北部から群馬にかけて現在でも点在している昔の家の美しさは、気候に配慮した軒の出を抜きには語れない気がしてきました。軒下の縁や広縁で庭を眺めながら近所の人たちとの交流ができたり、雨の日でも窓を開けておける性能を持っていたりというのが日本の家なんだなと感じています。
施工途中の写真などはこちらをご覧下さい。

構造見学会を9/1及び8に行います。詳しくは次のリンク先をご覧下さい。
https://ayabekoumuten.jp/contents/news/files/toki-s-kengaku2.pdf