大工だからできる家

木の家づくりには、木の知識や経験が必要です。
常に木に触れ、木を知り抜く大工棟梁と、
木の性質を活かしきる
家づくりをしませんか?
綾部工務店の大工棟梁、綾部孝司が書いてます。
2011年11月2日

熟成

 無垢の木が美しく仕上る年数と木造住宅の減価償却耐用年数は奇しくも同じ年数である。それが良いか悪いかは別として、時がつくりだす価値に付いて考えてみたい。
 人工素材と自然素材の劣化は共に建てた時点から始まっているが、両者の違いは劣化したものがそのまま劣化し続けるか、劣化し一時汚くはなるが別の美しさが出てくることだろう。
 人工素材は建てたときが美しい状態で、出来るだけその美しさを維持するべく表面にコーティングをするなど工夫を凝らしている。ところが時間の経過とともにだんだんと美しさが減ってしまう。
 自然の素材は、新築から2年から5年程度にかけて雨シミや変色ムラで一番汚い状態を迎える、木肌の美しい建築当初の表情とはかけ離れてしまうこともある。10年を超えるとだんだんと変色ムラなどがわからなくなり次第に経過年数相応の落ち着きのある色彩と表面の質感に変化していく。熟成という言葉が相応しい年数は30年を超えた頃からだろう。その頃には住まい手の家族も建物とともに円熟味を増しているだろう。

50年経過した自宅の杉の戸袋