大工だからできる家

木の家づくりには、木の知識や経験が必要です。
常に木に触れ、木を知り抜く大工棟梁と、
木の性質を活かしきる
家づくりをしませんか?
綾部工務店の大工棟梁、綾部孝司が書いてます。
2011年1月16日

棟上げ

 棟が上がったのは夕方6時を少し過ぎた所、冬の寒さも忘れる熱気あふれるラストスパートだった。

 さかのぼること3年前、初めて建築主のN氏と出会ったのは、やはり北風の吹く季節であった。N氏の第一希望は、石場建て。大地と呼応する住まい方を望んでいた。これまで住んでいた家は築70年を過ぎた同潤会の木造住宅で建替えに際し古土を使いたいという。話し込む程に様々な想いが伝わってくる。
 時は建築基準法の厳格化の真っただ中。N氏と共に鉄の扉に正面から挑んで行く事を決意し協力者を探した。なんとかしたかった。地元の伝統的建物も現行法の中での耐震改修を行わざるを得ず、本来の特性が失われつつある中、それらを見直す一つの足がかりになるのではないかとも考えていた。少しして木の家ネットのメンバーが手伝ってくれることになった。関西の構造事務所も参加してくれることになった。確認申請をどこに出すなど課題は尽きない。受け付け拒否する機関が多い中、ようやく確認機関が決まった。口利きで協力して下さった方には感謝。人の温かさをつくづく感じている。
 上棟式の後、N氏から関わった皆に感謝している内容の話があった。感情がこもっていた。職人を問わずお互いに感謝している事を言葉にした。なんとも満たされた時間であった。

 建て方を手伝ってくれた木の家ネットの大工メンバーが、伝統構法の建て方はやはり良い。石場建ては特に良いと話してくれた。この良さの意味が皆に伝わると良いと思っている。


2008年7月15日

ゴミになる家と人の心

日本の住宅環境は、最近大きく変わってきていますね。見渡す限り〜風の家ばかり。現地に行ったことがある人ならば、本物との違いは分かるはず。正直なところセンス無い建築屋と依頼主が多すぎますね。空の色と全体の統一をもう少し考えましょう。良識ある設計の方はインテリアは自分のため、外観は周辺の人のため設計をしましょうと話されます。もっともだと思います。漆喰や無垢の木を使用すると、道行く人皆優しい表情になりますね。有機的素材は人の心を癒すのでしょう。逆に無機的な素材は人の心を閉ざしてしまうのかもしれません。
いずれ家が寿命を全うしたとき、もう一度使いたいと思うか、捨ててしまいたいと思うか。このあたりも大切だと思います。ゴミ大国日本はみんなで作り出してきたものです。もちろん私も気をつけたいと思います。
いずれ埋め立てゴミになる家に住むことと、再利用される素材に囲まれた家に住むことは、価値観の違いが大きく違ってくるはずです。優しく接しなければならない素材に囲まれていることは人の心を優しくし、人に対しても優しく接することが出来るようになるはずです。
警戒心をいつも抱きながら生活しなければならない今の日本。皆で変えてみませんか。私は素材から優しさを持つ心を伝えていきたいと思います。


2008年1月1日

持続可能な社会と木の暮らし1

先日テレビを見ていると、ある方が地球温暖化を防ぐ方法の一つとして割り箸を使った方がよいと話していました。私の家族は驚いていましたが、見る角度を変えると納得できると思いました。もちろん国産材を使ったものに限りますが。
普段木を扱う仕事をしていると、端材の多さに驚きます。柱や梁の切り落とし、そして電気カンナやカンナの削り屑。私はこれらの端材が上手く使いこなせないものかといつも考えています。今のところは、次のように処理していますがもっと良い方法が見つからないものかと考えています。
・柱や梁の端材:小材料に加工して棚や下地材、薪ストーブ燃料、炊事や給湯の燃料(※)
・削り屑や切り屑:土と撹拌して農業用の肥料、燃料
使い道のない材や屑は焼却処分しているものもありますが、いずれバイオエネルギーの一種として使われることを願っています。
木を使うことと温暖化防止は相反することのように感じるかたもいらっしゃいますが、適切な時期に植林木を伐採し、再度植林をして次のサイクルで使用するという行為が重要です。管理されていない森林を残すよりも定期的に更新し活発な若い森をつくっていくことが二酸化炭素削減にも効果があるわけです。伐採した木材は、無駄なく使い廻すことも必要です。製材品(無垢木材)では約60バーセント、集成材では約30パーセントが製品の歩留まりです。つまり製品に使えない部分を上手く、なるべく製造エネルギーを押さえながら活用することがこれからの課題となるでしょう。文頭で触れましたが、割り箸に利用するのも一つの方法かもしれません。しかし利用後薪に使用できるなどのさらなる活用があったほうが良いでしょう。もう一度自分たちの生活や将来と日本の木との関わり合いについて考え、具体的な行動に移していく必要がありそうです。
※:木を焼却した場合、成長に必要であった炭素以上に炭素は出ませんので、自然のサイクルの中で薪燃料を使用することは森林資源の健全な利用に繋がります。CO2排出量が灯油の25パーセント程度である薪燃料を上手に活用するのも温暖化防止に効果がありそうです。


2007年6月9日

長持ちさせたくなる家

 先日20年以上使い続けていた壁掛け時計が壊れました。この時計は、高校時代の工作の授業にて私が作ったもので、木を丸く加工し、文字盤を付け中央に時計部品を取り付けた一般的なものですが、捨てる気になれず、しまう気にもなれず使い続けてきました。新しい時計は別にあり、そちらのほうが時間は狂わないし見やすいし、機能はずっと自作の物より優れていますが、自作のものを超える愛着は湧かず、時々時間調整をしながらでも自作時計を使い続けてきました。時計部分が壊れた今でもやはり捨てる気にはなれず、修理する予定でいます。
 住まいも本来はそのように時々直しながら住み続けるものでありたいと私は常々考えていますが、いかがなものでしょうか。時代が変われば生活様式も変わるし、設備も変わる。その時代に合わせた家を造ったつもりが、すぐ時代遅れとなり、新しい家が欲しくなる。その流れがいつしか住み継ぐ家から着替える家へと意識を変えさせ、家を商品と捉えるようになってしまいました。確かに商品としての家を購入することは便利だし、参加型の家づくりよりも時間や労力が少なく済むかもしれませんが、住んでからの家に対する愛着も少なくなってしまいそうで心配です。長持ちする家は、住まい手、造り手が長持ちさせたくなる家でなくてはならないようです。そのためには、、、、。