大工だからできる家

木の家づくりには、木の知識や経験が必要です。
常に木に触れ、木を知り抜く大工棟梁と、
木の性質を活かしきる
家づくりをしませんか?
綾部工務店の大工棟梁、綾部孝司が書いてます。
2007年11月2日

木の乾燥(その方法)

しばらく間を空けてしまいましたが、木の乾燥について一言。
写真にある木はどちらも杉の木で、中心から挽き割っています。
濃いめの赤色が天然乾燥のもの、くすんだ赤色が人工乾燥(高温)のものです。
(杉の色はピンク色から黒まで様々ですので写真の色が全てではないですが、同様の傾向があるということです。)
写真では分かりにくいですが、人工乾燥のほうには中心部にひびがあります。
では、それぞれの材の違いは何でしょうか。(表をアップ予定)
木の形状:形状が変形しにくいのが人工乾燥、しやすいのは天然乾燥
木の香り:木の香りがするのが天然乾燥、焦げた木の香りがするのが人工乾燥
木の堅さ:固いのが人工乾燥、やわらかいのが天然乾燥
木のひび割れ:見える部分にひびがあるのが天然乾燥、内部にひびがあるのが人工乾燥
木の加工性:手工具で加工しやすいのが天然乾燥、機械加工が良いのが人工乾燥
木の粘り:しなやかに曲がるのが人工乾燥、曲がりにくいが脆いのが人工乾燥
木の油気:残っているのが天然乾燥、水分と共に出てしまったのが人工乾燥
省エネ:お日様の力を利用するのが天然乾燥、石油を利用するのが人工乾燥
今のスタンダードは、法規制の影響もあり、人工乾燥にシフトしています。昔から営々と続いてきた木を使いこなす作法を木の文化といいますが、木の文化を未来に繋げる運動をそろそろみんなでする必要がありそうです。
関連した記事が木の家ネットにありますので宜しければご覧下さい。
豆知識:人工乾燥には、高温乾燥(最高120度位)と低温乾燥(50度位)があります。低温乾燥は天然乾燥に近い性状ですが、高温乾燥よりも変形しやすいです。


2007年9月17日

稲刈り

今年も稲刈りの季節がやって参りました。今年は梅雨の雨とその後の暑さにより例年より収穫量は多いようです。(肥料も少し多めでしたが)
田植えは見習いの蓮実が行い、稲刈りは親方と私、そして親戚の方々にも手伝っていただきました。

台風の影響で倒れてしまった稲が多かったのですが、何とか、手刈り+機械刈りで3日ほどで完了しました。いつもは藁をそのまま土に帰してしまいますが、今年とれた藁のうち一部は来年建てる住宅の土壁用藁となる予定です。実りの秋を実感しています。


2007年7月20日

地震への備え

各地で大きな地震が起こっております。建物の倒壊により人命を失うことのない様に造り手として一層の技術向上を図って参りたいと思います。
さて、地震から建物を守る工法ですが、大きく分けて次の3つに分けられます。
1,耐震:地震に力で対抗する方法として最も普及している工法。読んで字のごとく地震動に耐える構造で、筋交いや合板を用い、剛性の高い建物を造り、基礎に堅固に固定する。
2,制震:地震力を吸収、受け流すなど制御する工法で、ダンパーなどの制震装置を用いる。
3,免震:地震力を受けないようにする工法で、金属ボールやゴムなどを足元に用い基礎と建物との結合状態を緩やかにする。
では、木造伝統構法の建物は、どのような方法をとってきたのでしょうか。基本的には自然に対抗し克服することではなく、自然の猛威には勝れないと謙虚に受け止め、上限を設定しない防衛手段を用意していました。具体的な方法は次回以降順を追ってお話しいたします。


2007年7月14日

素材を生かす

木には曲がったり、ねじれたりする性質があります。収縮や膨張などの形状変形も木の性質として当然あるわけです。最近の傾向では木は、より乾燥している方が良しとされ、当たり前のように人工乾燥材が使用されているようです。私にとってカラカラのカチンカチンになってしまった木には魅力を感じないばかりか、木の力や良さが生かしきれないことが残念でなりません。反ったり曲がったりする力をうまく組み合わせることが、将来にわたり安定した架構を保持し続ける筈なのに、、。個性を失ってしまった木は、既に木とは呼べないような気がします。木の癖を認め、見極め、うまく活用することが木造建築の木造たる重要な点ではないかと思いますがいかがでしょうか。最近建築基準法が改正となり、益々本来の木造建築が建てにくい状態になってしまっています。伝統や文化をもっと大切にしなければならないという思いが根付いていくことを願いながら、私自身も造り手として出来る限りの努力をして参ります。


2007年6月9日

長持ちさせたくなる家

 先日20年以上使い続けていた壁掛け時計が壊れました。この時計は、高校時代の工作の授業にて私が作ったもので、木を丸く加工し、文字盤を付け中央に時計部品を取り付けた一般的なものですが、捨てる気になれず、しまう気にもなれず使い続けてきました。新しい時計は別にあり、そちらのほうが時間は狂わないし見やすいし、機能はずっと自作の物より優れていますが、自作のものを超える愛着は湧かず、時々時間調整をしながらでも自作時計を使い続けてきました。時計部分が壊れた今でもやはり捨てる気にはなれず、修理する予定でいます。
 住まいも本来はそのように時々直しながら住み続けるものでありたいと私は常々考えていますが、いかがなものでしょうか。時代が変われば生活様式も変わるし、設備も変わる。その時代に合わせた家を造ったつもりが、すぐ時代遅れとなり、新しい家が欲しくなる。その流れがいつしか住み継ぐ家から着替える家へと意識を変えさせ、家を商品と捉えるようになってしまいました。確かに商品としての家を購入することは便利だし、参加型の家づくりよりも時間や労力が少なく済むかもしれませんが、住んでからの家に対する愛着も少なくなってしまいそうで心配です。長持ちする家は、住まい手、造り手が長持ちさせたくなる家でなくてはならないようです。そのためには、、、、。


2007年4月8日

屋敷森

冬の北風に備え農家の敷地内には屋敷森(やしきもり)という防風林がありました。今でも時々は見かけますが世代交代や家の建て替えのときにその多くが消滅しています。理由は管理が面倒などの理由でしょうか。屋敷森は防風のほかに家を建て替える際の柱や梁としても使われ、先代、先々代からの無言の意識を受け継ぐ方法としても意味あるものであったようです。娘が生まれたら桐を植えるという文化と同じような意味が含まれていたように思えます。
メディアでは毎日のように各地で緑が消滅している事実を伝えています。熱帯雨林の大量伐採ばかりに目が奪われそうですが、実は身近な緑を失わないよう少しでも増やすことが大切です。
屋敷森は敷地の関係で難しいのかもしれませんが、可能な範囲で緑を増やすことをお薦めします。1軒で何本か木を植えると全体で何百万本かの緑が増えます。実は無垢の木で作った家に住むと緑が欲しくなるのも事実です。人工のものでは味わえない感性を住まいながらに持つことが出来るのでしょう。住宅地が良く変わっていく姿を想像すると楽しみです。


2007年4月7日

換気を考える

24時間換気設置が法律で義務づけされて以来、真新しい住宅の排気口からはホルムアルデヒドなどを含む汚染された空気が屋外に次々排出されています。隙間無く建て込んだ住宅地の界隈では、概ね南側から空気を室内にいれ、汚染空気を北側に排出し、その空気を含んだ空気を北側の家が取り込み、また北側に排出する、さらにそれが次の家に続き、、、。
根本的な解決は行わないのだろうか。いつも不思議に思っています。私は大工として現場作業をしていますが、無垢の木材ばかりを扱っているうちに、化学物質を含む材料に敏感になってしまった様です。それ故、街のいたるところで開発されている住宅群を見るたびに住み手に同情さえしてしまうこともあります。
もっと根本的な方法で家づくりの素材や工法を考えないと、室内だけではなく周辺の空気汚染まで自分たちでつくり出してしまうのです。そのことを住まい手造り手そして国をあげて考えることが出来れば今よりももっと良くなるでしょうね。早く気づいて欲しいと思います。


2007年1月29日

温暖化防止の家づくり

「素材のままに材を使用した家づくりは、製造エネルギーや廃棄時のエネルギーを抑えます。素材の特性や自然のエネルギーを利用した住まい方は生活時のエネルギーを抑えます。そして、長く住み続けることは何よりも無駄を減らします。結果的に自然環境を守り、自分自身の住みやすい環境をつくることが出来ます、、、。」
こんな話を延々と建て主の方とお話しし続けて参りました。大工がエコノクラート(生態人)として仕事をしてきた時代が過去にあり、今再び環境のことを考えながら仕事をしはじめています。
各地で国産材を使う運動が起こっています。ところが、林業家や製材所の廃業は後を絶ちません。埼玉で先日、林業関係者や県、大工たちが一同に会した話し合いが行われました。それぞれの立場意見は異なりますが、お互いを知ることにより良い方向へ進んでいくような気がしました。
自然の恵みを受け、環境に悪影響を与えずに行う家づくりは皆が力を合わせ行うものです。過剰な利便性と過剰な性能の追求、人間中心の家づくりはそろそろ卒業し、未来のために今しなければならない家づくりを行っていく時期に来ているようです。

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