大工だからできる家

木の家づくりには、木の知識や経験が必要です。
常に木に触れ、木を知り抜く大工棟梁と、
木の性質を活かしきる
家づくりをしませんか?
綾部工務店の大工棟梁、綾部孝司が書いてます。
2008年9月15日

山の木々の行方

山を見渡すと豊富な森林がいつまでもあるかのように思えます。
今、多くの森林所有者は、世代交代を機に林業を離れているそうです。先祖から受け継いだ資産としての森林意識は薄れ、原木のバイヤー達からの買い付けに対し、木の家を造るための無垢の材料にではなく、合板や集成材、燃料チップへと続くルートへ材料が大量に流れているそうです。
素材の持ち味を生かし、自然との共生を考えながらの家づくりは、ますます造りにくくなる事が予想されます。耐震化という表向きの表現に、合理化材料による短命化や経済至上主義が隠されている事を生活者である建て主の方々やつくり手達は知る必要がありそうです。国が奨めるストックとなりうる超寿命住宅のお手本が古民家であるように、私たちは将来を見据えた真実を知る必要があるでしょう。
山や林業の原状を市民皆が考え、日々の生活や住まいづくりのときに考える事や市民運動として結束する事の重要性を痛感しています。
今年から来年にかけ様々な団体が、シンポジウムやセミナーなどを開催していく予定です。こちらのサイトでも可能な限り紹介していく予定でおりますので、地球市民としての皆様のご参加をお願い致します。
写真は、建築や林業の関係者が木の文化の再構築を討論をしている様子です。(around40’sの集まり)


2008年7月15日

ゴミになる家と人の心

日本の住宅環境は、最近大きく変わってきていますね。見渡す限り〜風の家ばかり。現地に行ったことがある人ならば、本物との違いは分かるはず。正直なところセンス無い建築屋と依頼主が多すぎますね。空の色と全体の統一をもう少し考えましょう。良識ある設計の方はインテリアは自分のため、外観は周辺の人のため設計をしましょうと話されます。もっともだと思います。漆喰や無垢の木を使用すると、道行く人皆優しい表情になりますね。有機的素材は人の心を癒すのでしょう。逆に無機的な素材は人の心を閉ざしてしまうのかもしれません。
いずれ家が寿命を全うしたとき、もう一度使いたいと思うか、捨ててしまいたいと思うか。このあたりも大切だと思います。ゴミ大国日本はみんなで作り出してきたものです。もちろん私も気をつけたいと思います。
いずれ埋め立てゴミになる家に住むことと、再利用される素材に囲まれた家に住むことは、価値観の違いが大きく違ってくるはずです。優しく接しなければならない素材に囲まれていることは人の心を優しくし、人に対しても優しく接することが出来るようになるはずです。
警戒心をいつも抱きながら生活しなければならない今の日本。皆で変えてみませんか。私は素材から優しさを持つ心を伝えていきたいと思います。


2008年1月8日

200年後に残すために

200年住宅の構想が国から出されています。200年住宅に必要な性能として私は次の内容も必要になってくると考えております。
・長持ちさせるためには、100年後、150年後にも安価に部品を提供できなければならない。
・長く住みたいと思える美しさや、変幻自在な機能性を備えていなければならない。
詳しい内容は後ほど続きにて。

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2008年1月1日

持続可能な社会と木の暮らし1

先日テレビを見ていると、ある方が地球温暖化を防ぐ方法の一つとして割り箸を使った方がよいと話していました。私の家族は驚いていましたが、見る角度を変えると納得できると思いました。もちろん国産材を使ったものに限りますが。
普段木を扱う仕事をしていると、端材の多さに驚きます。柱や梁の切り落とし、そして電気カンナやカンナの削り屑。私はこれらの端材が上手く使いこなせないものかといつも考えています。今のところは、次のように処理していますがもっと良い方法が見つからないものかと考えています。
・柱や梁の端材:小材料に加工して棚や下地材、薪ストーブ燃料、炊事や給湯の燃料(※)
・削り屑や切り屑:土と撹拌して農業用の肥料、燃料
使い道のない材や屑は焼却処分しているものもありますが、いずれバイオエネルギーの一種として使われることを願っています。
木を使うことと温暖化防止は相反することのように感じるかたもいらっしゃいますが、適切な時期に植林木を伐採し、再度植林をして次のサイクルで使用するという行為が重要です。管理されていない森林を残すよりも定期的に更新し活発な若い森をつくっていくことが二酸化炭素削減にも効果があるわけです。伐採した木材は、無駄なく使い廻すことも必要です。製材品(無垢木材)では約60バーセント、集成材では約30パーセントが製品の歩留まりです。つまり製品に使えない部分を上手く、なるべく製造エネルギーを押さえながら活用することがこれからの課題となるでしょう。文頭で触れましたが、割り箸に利用するのも一つの方法かもしれません。しかし利用後薪に使用できるなどのさらなる活用があったほうが良いでしょう。もう一度自分たちの生活や将来と日本の木との関わり合いについて考え、具体的な行動に移していく必要がありそうです。
※:木を焼却した場合、成長に必要であった炭素以上に炭素は出ませんので、自然のサイクルの中で薪燃料を使用することは森林資源の健全な利用に繋がります。CO2排出量が灯油の25パーセント程度である薪燃料を上手に活用するのも温暖化防止に効果がありそうです。