昔から木造の建物は、木の乾燥や変形との格闘でした。その中で生まれてきた構法や仕様は時代を経て洗練されて来たわけです。当時の川を使った流通の方法も良い木造をつくる上で貢献していました。簡単に木の流れと乾燥との関係を書きますと、山で伐採後の葉枯らし乾燥で木を軽くして運びやすくし、川で運搬中に余分な樹液や樹脂等を洗い流す水中乾燥を行う。これにより狂いや割れが少なく防腐や防虫効果も向上しました。次に木挽きが木を挽き、自然乾燥させるというものです。今では陸送で運んでしまいますので水中乾燥は珍しいですが、再び取り組み始めている造り手も出てきているようです。
木は乾燥変形による強度低下や美観低下を防ぐため、加工前に乾燥させて使いますが、ただ乾燥していればよいというものでもありません。木の変形を逆手にとって組み上げ、乾燥に伴いより堅固な建物を造ることも日本の木造技術の一つです。
木の乾燥をテーマにすると内容が多いためこの先何回かに分けて書いてまいります。
まずはさわりだけですが。
木の中の水分は、自由水と結合水に分かれます。自由水は木の細胞の中にたまっている水分で、結合水は細胞膜に含まれている水分です。立木伐採後の葉枯らし乾燥を経て製材するまでの乾燥では、主に自由水を乾燥させます。その後製材を行い再び桟積み乾燥などを行いますが、この期間に自由水の他結合水を乾燥させます。これにより木材が変形し始めます。自然乾燥期間は針葉樹の角材の場合、葉枯らし乾燥から気乾状態(含水率15%程度)にするまで2〜3年を要します。(気乾まで乾燥させると加工性は下がります。)最近では人工乾燥の技術が向上し、乾燥期間短縮に貢献しているようですが、木の風合いや香りを考慮するとじっくりと時間をかけて乾燥を行う自然乾燥に私は惹かれます。工期とのかねあいで何年も乾燥期間を持つことが出来ない場合もありますので、その場合加工期間も含めての乾燥を行います。
参考
<含水率の変化>
・100%以上:伐採直後
↓葉枯らし乾燥、運搬時自然乾燥
・100〜30%:製材時点(分増し挽き)
↓自然乾燥(人工乾燥を併用する場合はここで)
・〜20%前後:修正挽き時点(この時点で含水率60%程度の材もある)
↓運搬時自然乾燥、刻み小屋に納材
・〜20%前後
↓さらに刻み小屋で桟積み乾燥(黒心の杉などはこの時点より1年ほど置くこともある)
乾燥具合を見て矩出し及び寸法決め