棟が上がったのは夕方6時を少し過ぎた所、冬の寒さも忘れる熱気あふれるラストスパートだった。
さかのぼること3年前、初めて建築主のN氏と出会ったのは、やはり北風の吹く季節であった。N氏の第一希望は、石場建て。大地と呼応する住まい方を望んでいた。これまで住んでいた家は築70年を過ぎた同潤会の木造住宅で建替えに際し古土を使いたいという。話し込む程に様々な想いが伝わってくる。
時は建築基準法の厳格化の真っただ中。N氏と共に鉄の扉に正面から挑んで行く事を決意し協力者を探した。なんとかしたかった。地元の伝統的建物も現行法の中での耐震改修を行わざるを得ず、本来の特性が失われつつある中、それらを見直す一つの足がかりになるのではないかとも考えていた。少しして木の家ネットのメンバーが手伝ってくれることになった。関西の構造事務所も参加してくれることになった。確認申請をどこに出すなど課題は尽きない。受け付け拒否する機関が多い中、ようやく確認機関が決まった。口利きで協力して下さった方には感謝。人の温かさをつくづく感じている。
上棟式の後、N氏から関わった皆に感謝している内容の話があった。感情がこもっていた。職人を問わずお互いに感謝している事を言葉にした。なんとも満たされた時間であった。
建て方を手伝ってくれた木の家ネットの大工メンバーが、伝統構法の建て方はやはり良い。石場建ては特に良いと話してくれた。この良さの意味が皆に伝わると良いと思っている。
2011年1月16日